職業プログラマの休日出勤

職業プログラマによる日曜自宅プログラミングや思考実験の成果たち。リアル休日出勤が発生すると更新が滞りがちになる。記事の内容は個人の意見であり、所属している(いた)組織の意見ではない。

選ばれし #フォント川柳 #貂明朝

Adobe Creative Cloud さん主催の #フォント川柳 Twitterキャンペーンに応募したところ、なんと入選となりました!!



自覚なく ウエイト増える 字と体

この記事では、この川柳ができるまでの過程を紹介します。フォント川柳を詠もうとしている皆さんの参考になれば幸いです。

ボツ作品

フォントに関わる川柳ということで、フォント用語をひたすら思い浮かべました。
その結果の最初の川柳が、これです。

見出そう アセント・ディセント・ベースライン

https://twitter.com/t_motooka/status/970557446073626624

字の数は川柳に近いですが、面白みに欠けます。

その反省を生かし、用語の使用を抑えてみました。

いつどこで インストールを したのかな?

https://twitter.com/t_motooka/status/970558718810058752

しかしこれを理解するには、かなり望ましくない環境、または購入したフォントライセンスが多すぎて管理しきれないという状況に身を置いていたりする必要があるため、広く共感を得るのは難しいことがわかります。

もうちょっと多くの人に共感してもらえる話題ということで記憶を辿った結果、ここに行き着きました。

OSの バージョンアップで 違う文字

https://twitter.com/t_motooka/status/970560267590316033

これは、例えば Windows Vista で JIS 2004 字形が標準になったり、iOSのどこかのバージョンで San Francisco の描画が変わったり、といったことを思い浮かべながら詠んだものです。しかし、これも同業者の皆さんにしか通用しません。

ウエイトの話題

より多くの人にも届くフォント用語…として考えていると、「ウエイト」に行き着きました。
この用語なら、フォントに関わる仕事をしている人ほぼ全員に届きますし、文字と少しだけ関わりのある人々、例えばWebサイトでCSSを書いた経験のある人にも届きます。そして何よりも、人間の体重との掛詞になります。
これは良いぞ!と気付いて、このような句を詠みました。

ウエイトを 減らしたいのは 私もよ

https://twitter.com/t_motooka/status/970561141117038592

意味としては、次のものが挙げられます。

  • 細い文字の方がスッキリ見えるので細い文字でデザインしたいけれども、細くし過ぎると力強さや可読性、視認性などが損なわれてしまうので、ウエイトを減らしたくても減らせない状況があってつらいという気持ち。
  • 体重は 減らしたくても 減らせない #一句 そう、体重が減らなくてつらいという気持ち。

改良版

直前のウエイトの一句は、掛詞は上手く効いていますし取り上げる話題も広く受け入れられ易いものになっていますが、音声的な面白みに欠けます。
そして改良したのが、今回の一句です。

自覚無く ウエイト増える 字と体

https://twitter.com/t_motooka/status/970598599644954625

この表現について解説をしていきます。

意味
  • 1つのページ(紙もWebも)の中に文字がたくさんあるとき、それぞれのサイズやウエイトをバランスよく調整するのは難しいもので、調整しているうちにウエイトがインフレを起こして、いつの間にか太い文字だらけになっていることがあって、つらいです。(初心者の悩みかもしれませんが)
  • 体重も、知らずに増えて、つらいです。 #一句
  • フォント作者としては、良いフォントができると、異なるウエイトのフォントも作りたくなってしまいます。もしも作業に使える時間が十分にある場合、気付いたらウエイトの種類の数が増えています。時間が減って、つらいです。(通常、そんなに時間が余っていることはありませんので、このつらみを味わうことのある人は極めて稀でしょう。)
「字と体」

これは「体と字」ではダメなのです。その理由は2つあります。

  • 川柳にしろ俳句にしろ 5・7・5 ですが、この5音や7音の内訳は何でも良い訳ではありません。何を持って良いとするかは人によって評価が分かれるところであり、その評価の多様さこそが作風の構成要素であるでしょうけれども私見としては、5音のところは1音目と3音目に西洋音楽で言う所の「強拍」が来る構成であるものの方が川柳・俳句っぽさが増して美しいと考えています。また、日本語の文節の先頭は強拍に相当すると考えていますので、1音目と3音目に文節の頭を置くことを良しとしています。
  • フォント用語には「字体」があります。「字と体」の順番に文字が書いてあれば、普段文字に関わる仕事をされている皆さんの多くは「字体」を思い起こすはずです。こうして「心に届く」川柳が生まれます。
「自覚無く」vs「無自覚に」vs「知らぬうち」

この言葉の選択は悩ましいところです。一般的に川柳・俳句は大和言葉に近い「知らぬうち」の方が良しとされることが多いように思いますが、前述の理由で最後の段が「字と体」となっていて「じ」という強い音声が配備してあります。韻を踏むという行為に近いものではありますが、複数の段で強い音声を生じる J の子音を置くことで強く印象付けることができるだろうと考えて「自覚無く」を選択しました。

参考リンク

Adobeさんの製品の例

※私(わたくし)は Illustrator(イラストレータ)の ユーザです。 #一句

さいごに

皆さんも #フォント川柳 応募して
#一句

ちなみに

私自身は、先週末に出張で福岡へ行っていた影響により、ウエイトが2段階ほど増えたようです…
(福岡に行った件は、また別の記事で。進捗良ければ。(良いとは言ってない))