ここ数日話題に上がっている日大アメフト部の反則タックルに関する情報を見て、自分の過去の体験に心当たりがあったので、改めて書き記しておきます。
※たぶんこのブログでは書いたことは無いだろうとは思いますが、一部のものについてはSNS等では言及したことはあるはずです。だから「改めて」書き記す、という体裁になっています。
3行まとめ
- 違法行為の指示を断るのは難しい
- 最強の武器は「いつでも転職すればいいや」という気持ちと自信と実態
- 指示を出す側として違法性に気付けないこともある
事例その1:指示を受ける側として
昔、勤め先の会社の偉い人から、我々の業界に身を置く人間であれば新人さん以外はほぼ全員が概要を知っているような有名な法律に違反する方法によって、不適切なデータ処理をするように指示を受けたことがありました。
とっさの自分の対応
「これは違法行為では?」とすぐに疑いを抱いたものの、条文やガイドラインを参照することのできないその場では違法行為であるという確信には至りませんでした。なので「違法行為だ」という明言は避け、倫理的な観点での問題点の指摘のみを行いました。話は全く通じずに面倒くさくなったので私の声は怒鳴り声になっていきました。
そう、日頃から意識している法規制であっても、いざヤバいものを見かけたときにも即座に「違法だ!」と断言するのは難しいのです。
その後の動き
後で調べてみたところやはり違法行為だという確信を得ましたが、「こんな基本的なことを理解できない状態でこの会社に就職できているはずがない、指示者は法規制を理解しているはずだ」と考えたため、違法性の説明など不要で、指示者は倫理的に問題のある人物なのだろうと考え、ただ断るだけのことをしていました。私が取っていた行動は「拒否」「拒絶」というよりはむしろ「無視」に近いものかもしれませんが、その違法行為を実行に移すことのできる技術力を持った人間が当該部署では私しか居なかった(それもそれでどうよww)ため、結局実行に移されることはありませんでした。
大事なものは?
一番大事なのは自分の身です。
自分の身を守るに当たって最も確実なのは、違法行為の指示には従わずに断ることです。
しかし!指示に従わずに会社に居続けた場合、昇給などの面で不利になることがあるかもしれませんし、減給されたり解雇されたりすることだってあるかもしれません。そうなったとしても生き延びることができるという自信が無ければ、断ることだってままなりません。
ですので、自分自身を守るために大事なものは「いつだって転職すればいいや」という気持ちと、実際にいつでも転職できるという自信や裏付けであると言えます。前述の事例のように私が指示を無視することができた理由は明らかで、転職し放題だったからです。
いつでもどこにでも転職できるという状態は、きちんと維持しておきましょう。
転職が難しい場合は?
断りきれた場合も実行してしまった場合も、公益通報者保護法に基づいて通報するという対応くらいしか思いつかないです。
この法律に基づいた保護、どれくらい実効性があるんでしょうかね?気になるところです。
事例その2:指示を出す側として
つい最近の話ですが、自分が他の方に依頼しようとした仕事の内容の一部が、とある士業の独占業務の内容の一つに該当し得るということに後から気付いた、ということがありました。依頼先の方は無資格者でしたし、依頼の時点では私はそのことを知っていましたが、依頼内容の一部が独占業務に該当し得ることを知りませんでした。その仕事は他の理由により依頼を断られて開始することもなく立ち消えしたのですが、そのまま進んでいたら大変なことになっていたところでした。「該当し得る」ということには、後日、ネットの掲示板を適当に閲覧している途中で似た事例が紹介されているのを見かけて、そこで気付きました。
違法性に気づくことができるか?
仕事を進める上でほぼ必ず関係してくる法律に関しては色々気づくことも比較的容易ですが、落とし穴はすぐそこに、ちょっと業務範囲が広がったところに、堂々と待ち構えているものです。業務範囲が広がることが無くても、大規模化するだけで落とし穴が待っていることだってあるでしょう。
あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい
…という言葉もあります。
前述の通り、私には実行すれば違法行為となる内容の指示を出した経歴があり、一般には「石を投げる」資格は無いとみなされるでしょう。それでも私はその前に紹介した事例にあるような、その業界の中の人ならば知っていて当然である法規制を堂々と破るような輩、しかも倫理的にも問題のある方法で破るような輩には石を投げ続けるでしょう。その主な理由は「業界人ならば知っていて当然」ということ(言い換えれば善管注意義務を果たしていないということ)と、そのような輩を放置すれば多くの一般消費者や市場が被害を受けるということ(言い換えれば石を投げることに高い公益性があること)、の2点です。
この考えが適切であるとは限りませんが、少なくとも現時点では私はこのように考えています。
ニュース等で不祥事が明るみに出た時に、それが本気で叩き潰すべきものであるのか、それとも情状酌量の余地があるのか、一歩引いて見つめる程度の余裕は持っておきたいものです。
最後におまけ:おすすめの本
企業不祥事 事後対応の手引き―社内調査・マスコミ対応・第三者委員会
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企業で発生しうる不祥事が多く紹介されており、勉強になりました。
なお、本記事執筆時点ではKindle版は発行されていないようです。