職業プログラマの休日出勤

職業プログラマによる日曜自宅プログラミングや思考実験の成果たち。リアル休日出勤が発生すると更新が滞りがちになる。記事の内容は個人の意見であり、所属している(いた)組織の意見ではない。

iPhoneが勝手に国際SMSを送る?

Australiaに来てiPhoneを利用している人の一部から、「身に覚えの無い国際SMS送信があって、通信キャリアから請求されるんだけど、なんで?」という相談を頂くことがあります。個人的な相談であることもあれば、職場で受ける相談のこともあります。
この記事では、このことについて簡単に解説をしておきたいと思います。

何が起きているのか

iPhoneは、実際にSMSを送信しています。
何の為に送信しているかと言うと、

の2つの目的のため、です。

ご存知のように、これら2つの機能は、電話番号による着信を可能としています。
ところが、この着信にあたっては、通常の電話回線ではなくてインターネットを経由することになるため、Appleのサーバの立場で考えれば、どのiPhoneにメッセージ等を投げれば良いのかわからなくなってしまうのです。
なので、電話番号による着信を可能とする為には、AppleApple ID と電話番号を関連づけて把握しておく必要があります。

この仕様の問題点

iMessageやFaceTimeにおいて電話番号による着信を実現するためにSMSを送信する必要があることは、納得できます。ところが、このSMSはイギリス(英国の国番号は 44 です)に向けて送信されるのです。「001144」で始まる番号にSMSを送信してしまう訳ですね。
Appleほど潤沢な資金を抱えているのであれば、各国に受信用のサーバを設置して欲しいものですが…

どんな時に国際SMSを送信しているのか

筆者は全てのケースを網羅できている訳ではありませんが、今のところ、以下のような操作をした時に、国際SMSを送信するようです(恐らくこれで全てでしょうけど)。

  • SIMを抜き差しする等の行為によって、iPhoneの電話番号が変わったとき
  • Settings(設定)アプリで、iMessage を OFF から ON に切り替えたとき
  • Settings(設定)アプリで、FaceTime を OFF から ON に切り替えたとき

実はiOSはきちんと仕事をしている!!

多くのユーザは「iPhoneが勝手に国際SMSを送っている!」と認識しているようですが、実は「勝手に」ではありません。きちんと警告を表示しています。

左(閲覧環境によっては上かも?)から順に、「SIMの交換で電話番号が変わったとき」「iMessageをOFFからONに切り替えたとき」「FaceTimeをOFFからONに切り替えたとき」です。
このスクリーンショットは英語版ですけど、日本語版ならそれ相応のメッセージを表示していることでしょう。
上の画面のメッセージ「Your carrier may charge for SMS messages used to activate {iMessage|FaceTime}.」を日本語に訳すならば、「{iMessage|FaceTime}を有効にするためにSMSを送信します。SMSの料金が課金されるかもしれません。」といったところでしょうか(日本語版における正確な文面は、筆者は確認しておりません)。

ここで「OK」を押すと、SMSが送信され、iMessage/FaceTimeが利用可能となります。「Cancel」すると国際SMSは送信されませんが、iMessage/FaceTimeを利用することはできません(もしかすると電話番号での着信ができないだけかもしれません)。

そう、iOSはきちんとユーザに警告を発した上でSMSを送信しているのです。
問題点は、ここに「イギリスに送る」という情報が欠けているということ、の1点のみであると考えます。

なぜ日本では報告されないのか

この理由ははっきりとはわからないのですが、以下のいずれかの理由なんだろうと推測しています。

  • 日本で流通しているiPhoneは、通常は、SIMロックがかかっています。それと同時に、iMessage/FaceTimeの認証に独自の方式を設けてあるのではないか?(3G/LTE回線経由であれば認証できる、など)
  • 日本の通信キャリア(SoftBankKDDI(au)ですね)は、この原因によるSMSの料金をユーザに課金していないのではないか?(通信キャリアが自腹を切っているのではないか?)
  • 日本国内でactivateした場合は、日本国内のサーバにSMSを送っているのではないか?

などなど。これらの推測の裏付けを取るのは、至難の業ですね。通信キャリアの中の人(の中でも偉い人)に聞かないとわかりませんね。

回避策

イギリスに向けた国際SMS。Australia国内から送信すると、だいたい40セントから60セント程度、課金されるようです(これは通信キャリアや料金プランなどによって変化します)。1回だけなら大した問題にはなりませんが、何回も送信されてしまうと、料金が大きくなってしまう可能性もあります。
やはり、回避するには、

  • 1台のiPhoneは、電話番号1つだけで運用する(複数回線を契約して、複数のSIMを持っていて、それを差し替えながら使うような運用にはしない)
  • FaceTimeやiMessageは一回ONにしたら、もうOFFにはしない

ということに気をつけるしか無いでしょう。

参考リンク

アクティベーションを何回もしているので国...: Apple サポートコミュニティ
珍しく、日本国内からの報告です。SIMロックフリーiPhoneをdocomo回線で運用しているようです。
質問者は「日本語が不自由」ですし態度も行動も極めて悪質ですが、貴重な症例であることには間違いありません。回答者の皆さんはまともな方も多いので、情報としては参考になるかと。

random automatic international sms?
豪州最大の技術系掲示板 Whirlpool に寄せられた質問です(英語)。
ちなみに、ここに登場する「Telstra」「Vodafone(略してvoda)」「Optus」というのは豪州の三大通信キャリアです。「Virgin」というのは、各キャリアの回線のリセラー(reseller)にあたります。日本で言うと「日本通信」がdocomoの回線を売っているのと同じ格好です。
ここのスレッドの一番最後の回答者「kora」さんによれば

Telstra allow this to be done via the phones internet connection. Optus and voda have blocked the internet method, and forces the phone to send a sms. The number is often international.

http://forums.whirlpool.net.au/archive/1780097

とあります。もしもこの情報が本当ならば、日本でこの現象が報告されないのは「SoftBankKDDI(au)が、インターネット回線経由での認証を許可しているから」という説が濃厚ということになりますね。
他にも、送信先の国は言語設定に依存してるんだ、という書き込みも見られますが、これは本当かどうか怪しい…。どうなんでしょう?

言いたかったこと(まとめ)

  • iPhoneはSMSを「勝手に」送っている訳ではないです。iPhoneが警告を表示したら、その内容はきちんと読みましょう。
  • この件で通信キャリアを質問攻めにするのは筋違い(参考リンクの1件目の質問者のような行動を取るのは重大な誤り)。
  • Appleさん、AustraliaにもiMessage/FaceTimeのactivate用のサーバを設置して下さい! または、SMS送信時の警告に、国際SMSであることを明記して下さい!