職業プログラマの休日出勤

職業プログラマによる日曜自宅プログラミングや思考実験の成果たち。リアル休日出勤が発生すると更新が滞りがちになる。記事の内容は個人の意見であり、所属している(いた)組織の意見ではない。

ANZAC Sunday

4月21日(日)。所属しているバンドで ANZAC Sunday のイベントに参加させて頂きましたので、その記録です。
1月のAustralia Day(建国記念日)に続いて、外国人の身でありながらこういう国家的な行事に参加させてもらえることを有り難く思います。

ANZAC とは

Australian and New Zealand Army Corps の略で、オーストラリアとニュージーランドの連合軍、ということになります。この両国にとって他国との大規模な戦争は第一次世界大戦が初めてのことです。この両国の本土に直接的な危機は無かった(?調査しきれず。ちょっと怪しい)のですが、イギリスとの関係上、どうしても参戦せざるを得なかった状況だったようです。

ANZAC Day と ANZAC Sunday

第一次世界大戦の中でも熾烈を極めた戦いの一つが、トルコのガリポリ(Gallipoli)での戦闘です。オーストラリアやニュージーランドを含むイギリス連邦の各国及びフランスの軍がガリポリ上陸作戦を開始したのが1915年4月25日のこと。ANZACにとっては多大な犠牲を払った戦闘であることから、戦没者追悼のための記念日(⇒ANZAC Day)になっています。
また、この1915年4月25日が日曜日であったことから、ANZAC Dayに近い日曜日は ANZAC Sunday として、この日も戦没者追悼のイベントが多く催されます。

Coogee での行進

Coogee(クジー/クージー)は、Sydney市街地から南東へ7kmほど離れたところにある住宅街です。行政上は Randwick(ランドウィック)市に所属し、Coogee Beach という人気のビーチを擁します。
ANZAC Sunday の朝はまず、この街で行進をしました。行進とは言ってもただ単に歩くだけではなくて、演奏しながらの行進ですよ。これは痩せる。

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さすがに全体の写真を撮ることはできず…。
この写真の真ん中に写っている彼は、学校で日本語を勉強している強者です。練習の合間にはiPhone日本語学習用のアプリで勉強したりもしています。日本語で話しかけても華麗にスルーされるので、僕の英語と同じく、読み書きが中心なのでしょう。
写真真ん中の奥、白い格好をした人達は太鼓を叩く皆さんです。
写真右側の奥には、Australiaの軍隊の制服を着た方が居られます。この制服、写真では見たことがありましたが実物はこのときに初めて拝見しました。

Coogee RSL での式典

RSL とは Returned and Services League の略で、退役軍人のためのNPO(非営利団体)です。このNPOはAustralia国内の各地に施設を持っており、普段はバーやレストラン、スポーツクラブなどが稼働していて、ANZAC Day などのイベントでは大活躍することになります。所属しているバンドの練習場としてもお世話になっています。

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これは式典会場の準備中の写真。バンドはステージ上…ではなくて、写真左側に少し写っている場所に陣取りました。

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式次第。

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式典終了後のステージ。緑色の円形のものは戦没者の為に捧げられた wreath です。左側には、イギリス、フランス、ニュージーランド、オーストラリア の4カ国の国旗が掲げられています。第一次世界大戦における主要な(?)連合国ですね。

Waveley Council での式典

Waveley(ウェイバリー)は、Sydney市街地から東へ5kmほど離れたところにある街です。
市役所の横には巨大な公園と競技場があり、今回の式典はこの公園で行われました。

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式次第はCoogeeのものよりも豪華です(笑)

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公園の中央に設置されている像は、よく見れば兵隊さんの像でした。
多くの wreath が捧げられています。

式典の流れ

2つの式典に参加させて頂いた訳ですが、いずれも大まかには次のような流れでした。

  1. 地域のお偉いさん(?)による式辞
  2. 牧師さんによる式辞
  3. 讃歌の合唱(バンドで伴奏を担当)
  4. 各団体の代表者が戦没者のために wreath を捧げる(バンドでBGMを演奏)
  5. コルネットの独奏で、軍葬ラッパの曲を演奏。バルブ無しのトランペットで演奏できる(=開管の自然倍音しか使わない)曲だけど、本気で泣ける。
  6. 黙祷
  7. コルネットの独奏で、起床ラッパの曲を演奏。こちらも同じく、バルブ無しのトランペットで演奏できる曲。早朝の爽やかな感覚を味わう。
  8. 国歌斉唱(バンドで伴奏を担当)
演奏した讃歌

こんな讃歌を演奏しました。

  • RecessionalWikipedia情報によると、この詩は1897年にビクトリア女王の即位60年を祝う為に書かれたものです。イギリス王室を讃える歌で、王室の繁栄は(イエス・キリストの)犠牲あってこそのものであり、その犠牲を忘れることはありませんという意味があるようです。戦没者の追悼の文脈でこの歌を歌うということは、戦没者達の犠牲を、イエス・キリストの犠牲と重ね合わせている、ということでしょうか。
  • Abide With Me :神よ、お護り下さい という意味のキリスト教の讃歌です。
  • Amazing Grace :これは日本でも有名なアメイジング・グレイスです。元々はこれもキリスト教の讃歌なのです。

今回(恐らく)初めて出くわした英語表現

中には「今更?!」なものもありますが、普通に生活しててもあまり出会うことの無い表現ばかりです。

wreath
木の枝や葉、花などで作った円形の飾り。クリスマスに飾るやつ?この飾りは故人を追悼するためにも使われる。
lest
(接続詞)〜しないように(かなり固い表現)。故人を追悼するための wreath には「Lest We Forget」(忘れやしない)と書いてある。この「Lest We Forget」は、上述の Recessional というポエム(歌と言った方が正確かも?)の一節の、「Lord God of hosts, be with us yet, Lest we forget, Lest we forget!」から来ているらしい。
marshal
パレードの先頭を歩く人(有名人であることが多い?)
address
式辞(演説)
A moment's silence
黙祷
emcee
司会者。MC(Master of Ceremony)。何故「MC」と書かないのかは、何か理由がありそう。
chaplain
牧師。特に、教会ではなくて軍や病院、学校などに所属する牧師のこと。
The Last Post
軍隊における葬儀(軍葬)で演奏する喇叭(ラッパ)(または就寝時に演奏する喇叭)
reveille
軍隊における起床喇叭
catafalque
棺(ひつぎ)