職業プログラマの休日出勤

職業プログラマによる日曜自宅プログラミングや思考実験の成果たち。リアル休日出勤が発生すると更新が滞りがちになる。記事の内容は個人の意見であり、所属している(いた)組織の意見ではない。

扶養義務地獄から逃れられるか?

ここ数日の話題で初めて名前を露出したような芸人さん(有名だったようだが、僕は知らなかった)が、扶養義務対象の家族が生活保護を受給していたとして叩かれているという。この件について。

叩かれる根拠は何なのか

各種ニュースやネット上の書き込み等を見る限り、恐らく次の3点の根拠から叩かれているのだろうと読み取った。

  1. 親族の生活保護受給が、扶養義務とは別の点で問題のある不正受給だった
  2. 親族を扶養するべきという社会通念上の義務を履行していない
  3. 民法 第4編「親族」第7章「扶養」に定められる扶養義務を履行していない

1点目に関しては、これが事実ならば批判があって当然のことだが、芸人さん本人を叩くことには疑問を感じる。
2点目に基づく批判はどうでもいいとして、3点目は(僕が条文を見た限りでは)罰則規定は無いものの法律に規定された義務であって、これに基づく批判は的を得たものである。
まあ、今回のケースでは部分的に扶養義務を果たしていたという話もあるので、(3点目に関して)これほどの大きな声で叩きまくることに全面的な支持はできない(これは声の大きさの程度の問題)。

この扶養義務についていろいろ見ていく中で、全く例外が認められないかのような論調を感じたので2つほど問題提起をしておきたい。

問題提起 その1

親からDVを受けて逃げ出した子供が働き出し、やがて安定した収入を得られるようになった。当然、逃げ出してからは(親とは)音信不通の状態である。その後、親の生活が困窮して生活保護の申請をした結果、役所から子供宛に扶養義務履行の要請が届いた。子供は経済的に扶養する余裕があるものの、心情的な理由から義務の履行を拒否あるいは無視した。

このような場合でも子供は叩かれなければならないのだろうか?

問題提起 その2

親が博打や集金カルト宗教にハマり、子供に金を無心するようになり、子供は親との連絡を絶った。やがて親の生活は困窮し、生活保護を申請した。
子供としては、もしも親を扶養するのであれば、博打や宗教にお金を使われないように制限をかけたいと考える。四六時中、親の行動を監視するのか?それだと子供自身の仕事ができなくなるので現実的な対応ではない。それでは、親を軟禁状態に置いたり、拘束具を使って行動を制限するのか?それも難しい。
こういう検討の結果、子供は扶養義務の履行を拒否/無視した。

このような場合でも子供は叩かれなければならないのだろうか?

生活保護/扶養義務の見直し論

もちろん僕はこういったケースがあれば、それは叩かれるのはおかしいと思う。しかしながら、扶養義務者の経済状況以外には扶養義務の免除規定は明示的には設けられていないので、叩かれる。(もしかしたら判例なんかはあるのかもしれないけど、そこまでは調べきれていない)
となると、問題提起に挙げたような子供達は、法改正などが無い限り救われないことになる。扶養義務地獄から逃れられないのだ。扶養義務地獄と言うよりかは、扶養義務に起因する身体的・精神的な多大なる苦痛と言った方が良いかもしれない。
もし法改正をして明示的に例外規定を設けるとすると…生活保護のケースワーカーさん達の負担がどんどん膨れ上がって破綻する状況というのは想像に難くない。
まだまだ問題は山積しているものの、近年議論が持ち上がって来ているBI(Business Intelligence ではなくて Basic Income)という単純明快な制度への期待は高まるばかりだ。