職業プログラマの休日出勤

職業プログラマによる日曜自宅プログラミングや思考実験の成果たち。リアル休日出勤が発生すると更新が滞りがちになる。記事の内容は個人の意見であり、所属している(いた)組織の意見ではない。

尊敬する人

尊敬する人は誰ですか?どんな人ですか?

そんな質問は、日々いろんなところで飛び交っていることでしょう。
個人的には、その質問に対する回答をお伺いすることには本当に全く価値が無いと考えています。しかし!その人物を尊敬するに至った過程を教えて頂くことには非常に大きな価値があると考えます。その思考の過程からその人(回答者)の価値観を知ることができるからです。

あなたが尊敬する人物は、どんな人物ですか?

  • 偉業を成し遂げた人物
  • 名言を遺した or 発信した人物
  • 素晴らしい人格を備えた人物

一般的には、こういった人物が挙げられるのではないかなと思います。

筆者も例外ではなく、尊敬する人は?という問いに対して真っ先に思い浮かべるのは、やはり偉業を成し遂げた人物です。いろんな人物が頭に思い浮かびますが、その中でも特にこの人!というのは「自分が実際に挑戦したけれども成し遂げることができなかったことを成し遂げた人物」です。

偉業を成し遂げた人、もちろん尊敬しています。でも、自分にはできなかったことを成し遂げた人って、普通の気持ちとは異なる、もっと大きな尊敬の念を覚えること、ありませんか? たとえその「偉業」の凄さが小さいものであったとしても、自分には不可能だったことをやってるんです。「本気でやっていればできていた」事項であればその感情が高まることはそんなにないかもしれませんが、本気で取り組んで失敗した事項では特別です。


じゃあお前が本気で取り組んで失敗したことって何だよ?という質問は来ると思うので、先に答えておきます。
もちろん複数ある訳ですが、その中の一つを紹介しておきましょう。
それは、テキストエディタを作ることです。テキストエディタと言えば、コンピュータを触る際に最も長い時間触れるものであって、それはそのまま人生の中で最も長い時間触れるものであるとも言えます。利用者のこだわりも出易く、テキストエディタを巡る言い争いは「宗教戦争」と呼ばれることもあるくらいです。人間たるもの、自分の好みのテキストエディタは持っておかなければなりません。好みのものが無ければ、自分で作るのが筋です。
(その思考が正しいかどうかは置いときつつ)そう思って、もう16年ほど昔のことではありますが、Mac上で動作するGUIテキストエディタを自力で開発しようとしていたことがありました。当時、Mac OS 8 の頃はMacアプリの開発に必要な情報がネット上に必転がっているということはほとんど無く、大変つらいものでした。それだけではなく、処理の複雑さも、それまでに組んできたいかなるプログラムとも比較にならないものでした。

世の中で言及される歴史上の人物の数々の偉業に比べれば、テキストエディタを作ることなんて本当にちっぽけなものです。でも、自分にできなかったことというのは、自分にとっては非常に大きなことなのです。


世間の評価に左右されずに、自分の価値観をしっかりと持つことって大事なことだと思います(と自画自賛してみるテスト)。
尊敬する人物の偉業の大小は、その人の良し悪しを計るものさしには成り得ないものです。