職業プログラマの休日出勤

職業プログラマによる日曜自宅プログラミングや思考実験の成果たち。リアル休日出勤が発生すると更新が滞りがちになる。記事の内容は個人の意見であり、所属している(いた)組織の意見ではない。

二つの語彙 : Receptive & Expressive

英語で喋っていると、相手は豊かな表現力で話してくるのに対し、こちらは良くも悪くも(大抵の場合は悪い意味で)シンプルな表現しかできなくて劣等感を覚える、という場面に遭遇することが未だによくあります。相手が表現していることを理解はできるのに、同じ表現を自分の口から放つのは難しいなと確信してしまうのです。日本語でも似た状況に陥ることは時々ありますが、それは少し置いといて。。

これは何故だろう?とずっと悩んできた訳ですが、先日、語彙力には2つの種類があるんじゃないか?!ということに気付きました。読んだり聞いたりしたときに理解できるという意味の語彙と、自分で自然に発することのできる語彙の2種類です。私が気付くようなことなのだから、世の中の先人達はとっくの昔に気付いていて、それぞれに適切な名前をつけているに違いないと思い、調べてみるとやっぱりありました。 Receptive Vocabulary と Expressive Vocabulary です。

Receptive Vocabulary

日本語だと「受容語彙」とか「理解語彙」と呼ばれるようです。文字通り、読み聞きしたときに意味を理解することのできる語彙のことです。この Receptive Vocabulary は、 Reading Vocabulary と Listening Vocabulary から成り立つのだそうです。言われてみれば確かに、耳で聞けば分かるけど綴りを見ても分からない言葉ってありますね。今では分かるけど、例えば cos とか(because の省略系)。日本語だと、知ってる言葉だけど漢字が読めないという状況に相当するでしょうか。

Expressive Vocabulary

日本語だと「発表語彙」とか「使用語彙」、「表現語彙」と言うそうです。英語でも別の表現があり、 Productive Vocabulary とも言うようです。先ほどの Receptive Vocabulary とは逆で、話したり書いたりするときに自然に飛び出してくる語彙のことだそうです。それで、これは Speaking Vocabulary と Writing Vocabulary から成り立つと。

Receptive から Expressive への壁

当然ながら Expressive Vocabulary は Receptive Vocabulary よりも少なくなってしまう訳ですが、冒頭に掲げたような劣等感を拭い去るには、この Expressive Vocabulary を増やす必要があるのです。かねてからの「通じる英語を話すことはできても、普通の英語を話すことができない」という悩みの原因も同じことによるのかもしれません。
それでは、 Expressive Vocabulary を増やすには、どのようにすれば良いのでしょうか?
私は言語学者でも教育研究者でもなく、科学的な根拠を掴む術さえ手元にはありませんので単なる「あてずっぽ」になってしまいますが、修行法をいくつか提案したいと思います。そして実践して数ヶ月後に結果報告なんてやってみたいなと妄想もしておきましょう。

思考を英語にする

何か物事を考えるとき、そこで登場する言葉の数々は必ず脳内では発音しています(経験則)。脳内にしろ実際の口にしろ、発音することは Expressive Vocabulary の成長を助ける効果があると考えられます。言い換えると「知ってる言葉を言い慣れる」ということになるでしょうか。
日々の思考を英語に切り替えれば、どんどん Receptive Vocabulary が Expressive に変わっていく、そんな気がします。

写経

文字を書く or キーボードで打ち込むとき、先ほどと同じく、その言葉は必ず脳内では発音しています(これも経験則)。思考を英語でするのと同じ効果が得られそうですが、いや、その効果はそれ以上です。何故なら、 Receptive Vocabulary の中でも脳内に浮かんでくる単語とこない単語があり、思考を英語にするだけでは前者が Expressive に変化するだけであり、後者には効果が出ないからです。適切な文献を用いて写経を行えば、きっと Expressive になる単語は増えていくでしょう。
「文章を読んでるだけじゃダメなの?」という疑問が頭をよぎりますが、やはりダメだと思います。何故なら、読んでいるだけでは適当に読み飛ばしてしまうからです。「じゃあ読み飛ばさない強い意志があったら大丈夫じゃん」という言葉が聞こえてきそうですが、そんな強い意志があったら、30歳を過ぎてまで英語で苦しむことはありません。

音読

そう言えば、数ヶ月前に友人から音読を勧められていました。その友人は私の発音を自然にするための手段と、リスニング力を強化するための手段として音読を勧めていたのですが、音読にも写経などと同じ効果が期待できますね。しかしながら、音読という修行は周囲の環境が整わないと難しいのと、喉の都合もあるので、いつも実施できる訳ではありません。上手く組み合わせて修行を重ねていきたいものです。

単語テストで計られるもの

「次の英単語を日本語にしなさい」という形式のテストは、 Receptive Vocabulary を計測しているに過ぎず、 Expressive Vocabulary は計測対象外です。 Expressive を計るには、やはり「次の日本語を英語にしなさい」という形式のテストで確認する必要があるのでしょう。前者のテストができただけで喜ぶのはまだ早い、となります。

さいごに

この記事では Expressive Vocabulary を強化することに焦点を当てました。しかし Receptive Vocabulary という土台がなければその語彙が Expressive になることは極めて稀でしょうから、 Receptive もないがしろにすることはできませんね。

参考リンク集