この記事は PostgreSQL Advent Calendar 2012 の11日目です(時差の都合で、この記事の投稿時点では日本はまだ12月10日です)。
前日の10日目は、 meketen さんの Raspberry PiでPostgreSQL(PostGIS)を動かして、現在地をしゃべらせてみた。 - meketenの趣味日記 でした。
翌・12日目は恐らく _john_doe_ さんです。
去年の PostgreSQL Advent Calendar 2011 では、 SQLFeatureNotSupportedException - JDBC4.0 API の中で未実装のもの で参加しました。
皆さんが技術的な情報を華麗に投稿されている中で恐縮ではございますが、私自身が現在Australiaに居住しているという事情もありまして、こちらでのPostgreSQLの活躍状況を報告したいと思います。「PostgreSQLへの愛を語る」系のエントリとなります。
これは街で見かけた本物(?)のAdvent Calendarです。
Australiaにおけるシェア(市場占有率)
やはり、まず気になるのはシェアです。
ネット上で公開されている情報を探そうとしたのですが、世界全体について述べたものはあっても、Australia国内のシェアについて述べたものはほとんど見当たりませんでした。そこで、次の2つの観点からシェアを推測することとしました。
書店での扱い
各RDBMS製品に関する書籍が、どれほど書店の店頭に陳列されているか?を観測しました。
・Dymocks
お洒落な店構えです。地下1階に教育書、1階に文具類と「売れ筋」の書籍、2階にその他の書籍が並んでいます。技術書はもちろん2階にあります。
SQLのコーナー。見ての通り、ほとんどが SQL Server の書籍で、下の方に少し MySQL の書籍が見えます。
この競合製品の山の中に、1冊だけPostgreSQLの書籍を見つけることができました。O'reilly の書籍ですね。
・Kinokuniya (紀伊国屋書店 Sydney店)
こちらも奇麗なお店です。ショッピングセンター(?)の3階に入居しています。1フロアだけですが、相当な広さがあります。今は本物(?)のAdvent Calendarが店頭に飾ってありました。その日のオススメ商品を掲げているようです。
紀伊国屋さんのデータベースコーナー。Dymocksと同様に、SQL ServerとMySQLの書籍が立ち並びます。残念なことに PostgreSQL の書籍は1つも見つけることができませんでした。
労働市場での扱い(PostgreSQL技術者の需要)
Australia国内でよく使われる(と思われる)各転職サイトで、各RDBMS製品名を検索し、その件数からシェアを伺い知ろうとしました。
サイト名 | PostgreSQL件数 | MySQL件数 | SQL Server件数 | Oracle件数 | DB2件数 |
---|---|---|---|---|---|
My Career | 1 | 27 | 168 | 187 | 9 |
CareerOne | 4 | 30 | 164 | 247 | 22 |
Australian JobSearch (豪州政府公式) | 1 | 15 | 369 | 137 | 11 |
Gumtree | 5 | 89 | 159 | 130 | 12 |
Careers 2.0 (StackOverflow) | 0 | 2 | 7 | 0 | 0 |
残念ながら、Australia国内ではPostgreSQLは非常に弱いということがわかります。
なぜAustraliaではPostgreSQLが流行らないのか?(伝聞・推測)
とある日系在豪IT企業の幹部の話によると、
在豪企業の業務用システムを新規に構築する場合、Microsoft社の製品群か、LAMP(Linux/Apache/MySQL/PHP 固定)構成のいずれかで構築されることが多い。
特に後者の場合は shared server*1 で運用されることも(日本に比較すると)それなりにある。
なんだそうです。私がこれまで見聞きしてきた事例達も、それほど矛盾はしません。
ここで出てくる shared server なんですが、どうやら PostgreSQL がインストールすらされていないことも多いようです。
この状況では PostgreSQL が流行りにくいというのも納得です。
今後のシェア拡大の期待
日本と同様、こちらのサーバ各社では、VPSの販売拡大を狙って色々と活動されています。これからVPSが普及していく今のタイミングこそが、PostgreSQLにとって「shared server にはインストールされてすらいない」というハンディキャップを乗り越え、MySQLからの乗り換え需要を喚起する大きなチャンスだとなるでしょう。
また、他のAdventCalendarの記事などからも見えてくる通り、競合するRDBMS製品と比較してもPostgreSQLには魅力的な機能や高い性能が備わっている(と私は信じています)訳ですから、日本と同様、Oracleなどからの乗り換え需要は期待大ですね。
ユーザコミュニティ
日本では NPO法人 日本PostgreSQLユーザ会(略称:JPUG)という巨大なユーザ会が存在し、各種イベントや日本語情報の提供など、多くの場面で大活躍されています。Let's Postgres というサイトも立ち上がっています。
Australiaでのコミュニティは PostgreSQL: Mailing Lists で Sydney や Melbourne, Adelaide などの各州都のものをいくつか見つけることができますが、残念ながらいずれも事実上の活動停止状態です。日本とは違って本家の英語の情報をそのまま使うユーザばかりであるという状況から、このようなコミュニティは産まれにくいのかもしれません。
最後に
日本の皆さんにもっと希望の持てる情報をお伝えできると良いなーと思ってこの記事を書き始めたのですが、あまり喜ばしい結果は得られずに残念な気持ちで一杯です。しかしながら、日本でPostgreSQLを極めて(?)おられる皆さんであれば、きっとAustraliaでのPostgreSQL普及に一役買うことができると信じております。
私自身も微力ながら尽力していきたい所存です。